読書

「潔い変態」とコミックで言われてました。

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「潔い変態」は「大谷崎」と呼ばれた谷崎潤一郎先生ですが、「先生」と呼ぶにはとてもとても泥臭く、自ら醜聞を繰り広げ、さらけ出し、作品に昇華させてしまう、やっぱり「大谷崎」なのでした。

  • ファースト谷崎潤一郎
  • 読了:谷崎潤一郎=渡辺千萬子往復書簡(2001年初版)
  • 積読:落花流水―谷崎潤一郎と祖父関雪の思い出(2007年初版)
  • 一周目:父より娘へ 谷崎潤一郎書簡集-鮎子宛書簡二六二通を読む(2018年)

ファースト谷崎潤一郎

私の「ファースト谷崎」は、書籍は「陰影礼賛」、映画は山口百恵さんと三浦友和さんの「春琴抄」でした。

映画が先になります。どうして見ようと思ったのか思い出せませんが、百恵さんと友和さんの共演が続いたころだったので、作家が谷崎潤一郎とは知らずに見ていました。

思い出の中ではモノクロ映画ですが、そんなはずはないなぁ・・・と思って確認したらやっぱりカラーでした。

記憶の改ざんが甚だしいですね。

「好きな女性のために自分の目をつぶす男性」の気持ちは小学生の私には「これでいいの?」の一言に尽きました。当時は語彙力もないので「純愛」とか「盲目の恋心」とか「恋慕」と言う言葉は知りません。

幸せではない終わり方でも見ていて苦痛ではなかったので多少改ざんされていても覚えているのだと思います。

「陰影礼賛」は「陰影」や「厠」など取り上げている題材を他の作家ではあまり読んだことが無く、ノックアウトされました。「大谷崎」から「理解出来たら日本人と認めてあげよう」と言われたような気がしたのを覚えています。

映画の「細雪」は小説の一部を美しく切り取っていますが、最後は雪子さんの「下痢」で終わるところが作中人物に意地悪だなと思ったり、大切にされているのは四女の妙子かもしれないと思ったりしています。

何度読んでも雪子への愛情が歪んでいる気がしています。これが小説「細雪」のだいご味なのでしょうか?

また読み返したい小説です。

読了:谷崎潤一郎=渡辺千萬子往復書簡(2001年初版)

千萬子さんの娘の「タヲリちゃん」を出汁にしている印象も強いですが、最後は怒った手紙を送りつけた内容で終わっているのでスッキリしません。

この本を読む前に「小田原事件」、「妻譲渡事件」を知って約100年前の醜聞が現代よりもセンセーショナルだったことが驚きでした。

現代では「妻」を「譲渡」するなどと書こうものなら「女性の人権がー」という議論になること必至だと思うので、これもまた時空を超えた醜聞を現代に生きる私の性格の悪さや暗さがあって楽しめる出来事ではないかと自問自答しています。

結婚と離婚と浮気を繰り返してもどうにも落ち着けないまま老人になった「大谷崎」が甥の嫁にまで言い寄ってしまい、言い寄られた嫁も金品の無心を遠回しにしている印象です。

夫がこんな人と知って三人目の奥様になった松子さんも「こんな人とは思わなかった。」と言う気持ちは大きかったのかもしれません。

この本のおかげで今までと違った本の楽しさを教えてもらったのであまり文句は言えません。

惚れっぽいという言葉では軽すぎるくらいかかわる人達を振り回し、傷つけていても書き続けられる精神力があったからこそ読み継がれる作品があるのかもしれません。

積読:落花流水―谷崎潤一郎と祖父関雪の思い出(2007年初版)

いまだに積読です。千萬子さんが何を思い出して書いているのか怖くて読めません。

開高健先生の死を受け入れられずに「珠玉」に手が付けられないのと気持ちは似ているかもしれません。

年内に読み切りたいです。

一周目:父より娘へ 谷崎潤一郎書簡集-鮎子宛書簡二六二通を読む(2018年)

最近の本と言っても良いですが、内容はほぼ100年前なので、「妻譲渡事件」の渦中で内側から父、母、二人目の父などを見ていた、たったひとりの実の娘の鮎子さんとの往復書簡は、千萬子さんと違って「父」としての行動や思いやりが感じられます。

一度、家族のことを書いたことがあり文才も父譲りと評されていますが、当の父が「父に関することは了承を得てから書くこと。」と叱責されたようで、その後は全く何も書かれていません。

母の千代子さんも娘の鮎子さんも黙して語らずを貫いたようですが、最終的には出版することにしたのには鮎子さんやそのご家族の何かしらの意味というか、内側から見えていたものを知られても良いという覚悟があってのことだと思いました。

私事ですが、実は私も筆まめです。

でも、本が出版できるほどの往復書簡はありません。

あっという間に削除できるメールの時代で良かったです。

「結局はそんな感想ですか?」と言われそうですが、黙して語らずは恥を晒さないためには良いのかもしれません。

この三冊を周回したら次は誰のお手紙を読もうか、ちょっとワクワクします。

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